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第4回世界自然保護会議(WCC)に出席して

 第4回世界自然保護会議(WCC)が2008年10月5日から14日までバルセロナで開かれた。これは国際自然保護連合(IUCN)の4年毎の総会で、世界の177カ国から8千人を越える政府、NGO(非政府組織)、ビジネス関係者、学者・専門家、報道関係者などが参加、自然保護の諸問題を議論し、今後4年間の活動計画を承認、135本の動議を採択した。
10月5日はIUCN設立60周年記念日で、スペインの王太子のアストゥリアス公、タイのシリントン王女などの出席を得て開会式が行なわれた。総会は従来約3年間隔で開かれていたが、1996年からWCCに名称変えして、今回がその4回目となる。
親善大使を務めるシンガー・ソングライターのイルカさんも参加し、会場で演奏会を開いて下さった。「なごり雪」など日本語の歌が中心だが、イルカさんの簡潔明瞭な英語の語り口で、聴衆との意思疎通も円滑で賞賛を博した。私は第2回WCC(2000年、アンマン)でアジア地域理事に選出され、以来2期8年間を務め上げて今回が最後の総会となった。
6日からの4日間は世界自然保護フォーラムといって、各種展示や多数のテーマ別ワークショップが行われ、参加者間のネットワーク作りの場にもなった。日本の関係団体は、里山に関するワークショップやジュゴン保全に関するアジアネットワーク会合などを催した。会議後半の5日間は、会員総会といって、今後4年間の活動計画の承認、会長、各地域代表理事、6つの専門委員会委員長の選挙、各種動議の審議・採決などが行われた。
漁業関係の動議の採択
今次総会では我が国に関係のある捕鯨や漁業に関する多くの動議が提案、採択された。クジラ関連では、「動議36:非致死的利用とクジラ・ウオッチング観光の奨励」、「動議37:漁業と大型捕鯨」、「動議45:南極及び南太平洋」である。日本政府は、動議36には事前協議でテキストが合意され、賛成した。動議37は、事前の合意テキストを無視して、豪州が「大型鯨類が漁業に深刻な影響を与えない」(日本は鯨類によるイワシなどの大量捕食の実体を調査中)との修正案を突如提出、強引に採決を求めたので反対、動議45にも、「IWC南太平洋の聖域の尊重を国連加盟国に求める」との一文にNGOが固執したために反対した。
日本のNGOの提案で、「動議27:2010年(国連の生物多様性年)におけるジュゴンの保全推進」が可決された。日本政府は、沖縄ジュゴン生息地域における米海兵隊基地建設問題に関する表現振りについて動議提案者側と最終合意が得られず、棄権した。
サメの保護に関する動議も採択された。なかでも、「動議35:全地球的な反ヒレ切り政策」は、多くのNGOがヒレ切り禁止を含む新たな措置を要求する内容で、我が国は棄権した。欧州のサメ行動計画やボン条約のサメに関する動議も採択された。
マグロ関連では、ICCAT(大西洋まぐろ類保存国際委員会)の枠組み内で管理措置を求める内容の「動議38:大西洋東部系群クロマグロ回復のための行動」が我が国などの賛成を得て採択された。その他、「動議40:地域漁業管理機関による漁業管理」、「動議41:IUU(違法・無報告・無規制)漁業にかかわる船籍国の責任」、「動議43:国家管轄権外の海域の海洋生物多様性保護の達成」などが全会一致で可決された。
このように、多数決で採択された動議が多いが、IUCNの動議には拘束力はない。ただ、事務局が動議実施の進捗状況をモニターし、公表するので、加盟国政府には道義的圧力がかかるといえる。
2008年版レッドリストの公表
IUCNが世界の多数の専門家・ボランティアの調査を基に毎年発表するレッドブックは有名である。本年は10月6日に特に哺乳類を中心にした現状評価が発表された。哺乳類5487種のうち1141種が絶滅危惧種とされ、更に「情報不足のために絶滅危惧種かどうか判断できない種」が836種あり、これを含めると哺乳類の実に36%が絶滅危惧種とされた。従来は哺乳類の約20%が絶滅危惧種とされていたが、保全状態が更に悪化したといえる。スペインオオヤマネコやスナドリネコが危惧種に追加された。
会長など役員改選
今回関心を集めたのは特に会長選挙である。インド、コスタリカ及びスペインから3人が立候補し、私なども推したインドのアショク・コスラ氏が当選した。アジア地域からの会長就任は実に18年振りのことで、3人の候補の中では経歴、識見とも抜群の同氏の選出を嬉しく思う。コスラ氏はローマ・クラブ会長、WWFやIUCNなどの自然保護機関、世銀、国連などでの経験豊富な人物である。アジア地域からの新理事には、私の外務省後輩の小池元在オランダ大使が、バングラデシュ及びネパールの候補とともに選出された。
IUCNの60年間の活動、地球サミットの開催、生物多様性条約など、国際社会の努力にもかかわらず、地球上の生物多様性の喪失に歯止めが掛からない。次のIUCN100周年を目指して、生物多様性保全の目標設定と戦略策定など更なる努力が求められる。
(2009年1月記)
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テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

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