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IUCN(国際自然保護連合)の活動

 私は2000年秋から08年秋まで、2期8年間、アジア地域選出のIUCN理事を務めた。私の前には堂本暁子前千葉県知事が、同じく2期8年間、理事に就任され、私の第1期目の選挙運動を精力的に支援して下さった。
IUCNとの関わりは92年の京都における第8回CITES(ワシントン条約)締約国会議に遡る。私が本会議の議長、マーティン・ホルゲートIUCN事務局長が第1委員会の議長を務めた。同氏とは連日、ビューロー(議長団)会合などで議事運営にとどまらず、広く野生動植物の保全問題を議論する機会に恵まれた。英国人の同氏は、自然保護を重視しつつも、資源の持続可能な開発・利用という原則には忠実な考えの持ち主で、私は非常に強い印象を受けた。環境保護派と資源利用派の主張が激しくぶつかり合う第1委員会(同委員会は各国の提案をベースに、各種の動植物を絶滅危惧の度合いに応じて、カテゴリー別に条約付表に掲載する役割を担う)の議長裁きは実に公平であった。日本も、このような人物が主宰するIUCNの国家メンバーになって、生物資源の持続可能な利用という原則の世界的普及に貢献すべきとの判断から、私は外務省に進言し、日本は95年に加盟した。これに先立って、私はホルゲート議長に招かれて94年1月のブエノスアイレス総会に出席して、IUCNの実際の活動状況を視察・体験した。
 IUCNは48年の設立以来、「自然を尊び、保全する公平な社会」を目指して活動している。国、中央及び地方政府機関、NGOなどが加盟するユニークな機関で、メンバー数は年々増えて、現在は千を超えている。また、種の保存、世界保護地域、環境法など6つの委員会の下、世界の1万人余りの科学者、研究者等がボランティアとして活動に参加している。自然保護分野の世界最大のネットワークである。
 IUCNの貢献は顕著である。第1に、今や人口に膾炙している「持続可能な開発・利用」、「生物の多様性」、「生態系管理」などの概念を、UNEP(国連環境計画)、WWF(世界自然保護基金)とともに導入した。「持続可能な開発」の概念は87年のWCED(環境と開発に関する世界委員会、通称ブルントラント委員会)報告に起源を求めるものもあるが、実は既に80年にこの3機関が発表した「世界保全戦略」の中で提唱されたのである。
IUCNは、単なる机上での提唱に止まらず、CITES締約国会議への各国決議案に対する意見書でも、この原則を忠実に反映している。環境保護派が追求するクジラ、象牙、タイマイなど日本に関係の深い決議案についても、科学的データに基づく客観的意見を提供している。肝心のCITES事務局がウィンステッカー現事務局長の就任以来、時には「持続可能な利用」原則を無視して、環境団体や欧米諸国に媚びる態度を取りがちなのと好対照である。(CITES事務局も、以前は各国の提案に対して極めて健全・中立的な意見を提供していたが、ウィンステッカー事務局長が就任してからは欧米の環境保護派の影響をしばしば受ける傾向があり、残念である。)
第2は、世界的広がりを持つ専門家のネットワークを活用して発表する「レッドリスト」である。2004年秋発表のレッドリストでは、15,589種が絶滅危惧種とされた。脊椎動物、無脊椎動物、植物、菌類を含む広範な分類群からなる種が扱われているが、世界で知られている種の僅か3%未満の科学的データしかなく、実状ははるかに深刻である。これによると、鳥類の12%、哺乳類の23%、両生類の32%が絶滅危惧種である。カメ類は約42%。魚類のデータも不十分だが、3分の1のサメ・エイ類の評価が終わり、18%が危惧種である。淡水魚は海洋生物以上に深刻で、例えば東アフリカの淡水魚の27%が危惧種である。(2008年のレッドリストを含めて、詳細はIUCN日本委員会のHPを参照。)
 第3は、各国の環境法の整備や生物多様性戦略の策定・実施の支援である。自然保護分野の多数の国際条約策定を推進し、ワシントン条約、ラムサール条約、ボン条約、生物多様性条約、ユネスコ世界遺産条約などの事務局への技術支援を行っている。日本の知床など、自然遺産の登録認定前の調査・評価も所掌している。
IUCNの日本での認知度はどうか。2004年11月、4年に一度の総会がバンコクで開かれた。私は理事会の求めで、日本企業を中心に募金活動をし、多大のご協力を頂いたが、IUCNの活動目的の理解を得るのに大変苦労した。この経験から、IUCNの活動を普及・促進するために、親善大使の任命を本部に進言し、04年7月、シンガー・ソングライターのイルカさんが任命された。IUCNにとって世界で初めての試みである。
イルカさんにバンコク総会に出席してもらったが、IUCN会長始め関係者から、正に最適任者を見つけたといって称賛された。彼女はこの総会のために作詞作曲した新曲(「そして今も・・・」)を含むCD(「私の動物アルバム」)を持参、配布してくれた。その後も、テレビ、ラジオ、新聞・雑誌、コンサートなどを通じてIUCNの使命を語り続けている。親善大使任命一周年の05年7月末には河口湖ステラシアターと大阪NHKホールでIUCNのための特別コンサートが開催された。その後も、河口湖などで毎年特別コンサートを開催して下さっている。イルカさんのコンサート会場には募金箱が置かれ、今では日本委員会の活動の重要な財政的支えにもなっている。(イルカさんは08年10月のバルセロナでの総会にも出席、会場でコンサートを開催されたが、その模様は別途お伝えする予定。)
 このような活動を通じて、IUCNが目指す自然資源の保護と持続可能な利用の認識が一層高まることを期待している。
(2005年9月記。その後一部補足・修正。)
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テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

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