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中国の経済発展:その驚異と課題(下)

高速鉄道事故の教訓 
 前回、日独の新幹線技術の模倣問題に触れたが、2011年6月末には北京・上海間の高速鉄道が開業、中国はその技術を米国などで特許申請した。これは日本企業が肝に銘ずべき教訓だ。先端技術の対中輸出や現地生産に当っては、目先の利益に囚われない慎重な対応が求められる。一企業単位の交渉力には限界があり、官民一体となって中国側に臨む必要がある。
11年7月末には、浙江省温州で脱線事故が発生、多数の死傷者を出した。この事故はいろいろな意味で世界の注目を集めた。第1に、事故の原因究明もせずに先頭車両を地中に埋めてしまった。正に隠蔽体質を曝け出した。被害者家族や世論の強い批判を受けて、車両を掘り興した。温家宝首相が数日遅れで現地を訪れて遺族らを慰問し、調査の公開、透明性の確保を約束した。原因究明結果の発表が待たれる。補償額も二転三転した。第2に、メディアやインターネットでの報道ぶりが過熱し、当局への批判が殺到した。しかし、当局の報道規制により、徐々に官製ニュースが中心になり、加熱報道をした新聞やインターネットへの締め付けを強化し、一カ月程度で鎮静化した。共産党幹部が主要インターネット会社を訪れて脅しているようだ。第3に、過去4年で1万キロと急ピッチで建設が進んだが、安全重視姿勢に転換、新路線の審査・建設の一時凍結を発表した。「世界最速」のスピードも減速した。車両の故障が多発してメーカーによる回収や大幅減便がみられる。第4に、米国、ブラジルなどで、日本や欧州企業の競争相手と恐れられた中国企業への信頼度も当面後退するだろう。
隣国との領土紛争と軍備増強
 10年9月の尖閣諸島沖での海上保安庁巡視船と中国漁船との衝突事件と日中関係の悪化は私達の記憶に新しい。東シナ海でのガス田開発に関する日中間の話し合いも進展がない。中国は南シナ海でも深刻な領土紛争を抱える。南沙諸島を巡るブルネイ、フィリピン、マレーシア、ベトナム及び台湾との紛争、西沙諸島を巡るベトナム及び台湾との紛争である。中国は南シナ海ほぼ全域の領有権を主張して、多数のベトナム漁船を10年に拿捕した。11年にも、フィリピン石油探査船への妨害、ベトナム漁船への威嚇発砲や資源探査船のケーブル切断などの事件が発生、状況は緊迫の度を増している。中国はこの地域を「核心的利益」に当たると宣言した。資源を始め、海洋権益確保がその狙いである。南シナ海全域を自国の支配下に置く考えである。
中国とASEAN(東南アジア諸国連合)は2002年に、航行と上空飛行の自由、紛争の平和的解決などを盛り込んだ南シナ海行動宣言を採択したが、事件の頻発を背景にASEAN側は法的拘束力ある行動規範の採択を主張してきているが、中国は2国間協議を重視して、これに応じない。11年7月の外相会議で行動宣言実施に向けたガイドラインに合意したが、中国側の時間稼ぎにすぎず、問題が再燃している。ASEANも一枚岩でなく、中国から経済援助を受けるカンボジア、ラオスなどの対応は生ぬるい。中国側の分断作戦である。
これは米国にとっても大きな関心事で、南シナ海での航行の自由は「米国の国益」(クリントン国務長官)、「米国の死活的利益」(マレン統合参謀本部議長)と述べて、国連海洋法条約などに沿った領有権主張の法的根拠を示すよう求めている。この地域への米国の関与を排除したい中国は強く反発している。
中国の近年の軍事力増強とこれを背景にした自己主張は、日、米、露、韓、ベトナムなど多くの国の懸念材料である。11年8月発表の日本の防衛白書は、中国軍事力の広範かつ急速な近代化と将来像が明確にされず、意思決定過程に透明性がなく、日本近海での活動の拡大と活発化は地域国際社会にとっての懸念材料としている。同じく8月発表の米国国防総省年次報告も、資源や漁業権益の確保、海上輸送路の確保が軍事戦略上の高い優先度を占めるとして、大陸国家から海洋国家へ変貌する中国への警戒感を強調した。中国が旧ソ連軍の空母「ワリャーク」を改修して最近航行を始め、また、ステルス戦闘機「殲20」の試験飛行を行うなど、東アジア地域の安全保障に不相応な軍備増強を図っていることは深刻な問題を提起している。
日本は一層の透明性の向上を中国に求める一方、強固な日米同盟をベースに、韓国、オーストラリア、ASEAN諸国、インドなどとの安全保障面の協力強化を目指す必要がある。
(2011年9月記)
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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

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