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大西洋クロマグロ漁業:資源管理の徹底を求める

 本年3月、ドーハでCITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、通称ワシントン条約)第15回締約国会議(COP15)が開かれた。日本にとっての最大関心事は大西洋クロマグロの国際取引禁止に関するモナコ提案の行方であった。ワシントン条約では、特定の種を条約附属書I(絶滅危惧種)に掲載することが3分の2の多数決で決定されると、その国際取引、即ち輸出入が禁止される。日本人の大好物たるトロが食べられなくなるとの連日の報道は私たちの記憶に新しい。日本に直接かかわる先例には、1987年のアフリカ象の取引禁止などがある。

20年来の課題
 実はCITESでのクロマグロの問題提起は筆者が議長を務めた92年のCOP8(京都)に遡る。当時既に欧米のNGO(非政府組織)が大西洋クロマグロ資源の枯渇を危惧し、資源管理の強化を唱えていた。オーデュボン・ソサエティが米政府にCOP8への提案を働きかけたが、日本などの説得もあって米国は応じなかった。ところが、米国WWF(世界自然保護基金)が動いて、スウェーデンが西大西洋クロマグロを附属書Iに、東大西洋クロマグロを附属書Ⅱ(商取引は可能だが、輸出国の許可書が必要)への掲載提案を行い、日本国内の大きな関心事となった。
 このときは関係国間の協議で、票決前にスウェーデンが決議案を撤回して事無きを得た。同時に日本、米国、カナダおよびモロッコはICCAT(大西洋まぐろ類保存国際委員会)を通じて一層の科学調査と資源管理を強化することを約した。一部NGOやメディアからは、舞台裏の取引で決定され、透明性がないと非難された。捕鯨問題で常に日本と敵対する米国も、対日輸出で儲ける米漁業関係者の圧力を背景に、カナダとともに日本に同調した。COP8に先立つICCAT年次会合で日本は漁獲量の50%削減を提案したが、米加の反対で実現しなかった経緯がある。次のCOP9でも、ケニアがクロマグロなどの規制提案の動きを示したが、取り止めた。
 そして今回のCOP15である。COP8当時と違って、近年は東大西洋と地中海のクロマグロ資源が深刻化している。モナコ提案に対してEU27カ国(但し、猶予期間を設けるとの条件付き)、米国などが次々と支持を決定し、COP15での帰趨は予断を許さない状況となった。だが、本会議での審議前に行われた第1委員会での票決で賛成20、反対68、棄権30という圧倒的票差でこの提案は否決された。EU加盟国も一枚岩でなかった。本会議では再投票の要求もなく、委員会の票決結果が確認された。

効果的資源管理の徹底を
 この結果に自己満足は禁物。この種の資源管理はCITESでなくICCATなど漁業管理機関で行うのが適切との日本の主張には一理ある。ただ、ミナミマグロを含めて資源の減少は著しく、マグロ漁業国や最大消費国たる日本への風当たりは厳しい。早急に効果的な資源管理を徹底する必要がある。そうでないと、結局CITESを通じた規制しかないとの国際世論が高まろう。COP15を控えた昨年11月のICCAT年次会合では、漁獲量の40%削減、漁期の半減、監視制度の強化、漁獲関連記録の改善などが決定されたが、課題はその効果的実施と普段の管理強化である。
 第1に、各地域漁業管理機関およびIUCN(国際自然保護連合)など関連機関の科学的意見に十分配慮した年間漁獲量の設定である。従来、産卵期の漁獲禁止を含む科学的意見が出ても、結局これを無視した漁獲枠が設定されてきた。日本の削減提案を無視する決定に対しては、輸入を拒否するぐらいの姿勢を取ってみてはどうか。WTO(世界貿易機関)違反云々の言い分にはGATT第20条で抗弁可能と思う。
 第2に、監視員制度の運用改善始め、加盟国の義務順守の徹底、特に地中海で顕著とされる沿岸国の違法操業の取り締まり強化である。日本は最近添付書類の怪しい輸入停止をしたが、今後も毅然たる態度で臨んでほしい。中国、韓国経由のすり抜け防止にも注意を要する。
 第3に、近年地中海で盛んになった蓄養が操業違反の温床とされる。産卵期の漁獲禁止導入や、蓄養と漁獲量に関する透明性ある記録方式の確立を求めたい。
 第4に、未だ種々の技術的困難はあるが、卵からの完全養殖技術の開発、導入である。既に近畿大や一部企業が取組んでおり、進展に期待したい。
 第5に、我々消費者としても、クロマグロなどの高級魚に偏ることなく、いろいろな魚をバランスよく摂る食生活への転換を図りたい。
 かつての外交交渉現場の経験から敢えて提言する次第である。クロマグロが一旦附属書Iに掲載されると、その変更(ダウンリスティング)は不可能に近いことを肝に銘じてほしい。
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テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

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