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民主化と経済開放に向かうミャンマー

 長年軍事政権が続いたミャンマーでは、2008年に新憲法を採択、2010年11月に総選挙を行い、2011年1月末招集の議会でテイン・セイン前首相が大統領に選出され、3月末には新政府が発足して民政移管を果たした。元軍人が閣僚ポストの大半を占め、軍の傀儡との評価も欧米にはあるが、民主化と経済の開放政策を進めて世界の注目を集めている。筆者は昨年11月初めに首都で経済閣僚などと会談、この変化を確認した。
 1988年のクーデターで登場した軍事政権は、元々1962年に成立した社会主義政権の下で経済・社会が極度に混乱し、これを収拾する目的で誕生したもの。89年には国名と首都名を英国が付けたビルマ、ラングーンからミャンマー、ヤンゴンに変更、政治経済改革を進めて90年には複数政党制による総選挙を実施した。この結果、アウンサン・スーチー(以下スーチー)女史率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝したが、軍事政権は議会召集を認めず、NLD指導者を拘束した。欧米諸国は厳しく批判して経済制裁を課した。
1992年に国家元首に就いたタンシュエ将軍は、95年にスーチー女史の自宅軟禁を解いたが、2000年に再度軟禁、欧米諸国は制裁を強化した。日本も緊急性が高い人道援助を除いて新規援助を停止。この間隙をぬって中国が資源開発、ダム・水力発電所やパイプライン建設などを通じて、影響力を増大した。2010年にはタイを抜いて第1の投資国に躍り出た。中国、インド、タイなど近隣諸国が制裁に同調せず、制裁効果は上がってない。2006年には首都をネピドーに移転した。
 2010年の総選挙では、軍事政権の傀儡といわれた連邦団結発展党(USDP)が連邦議会議席の80%弱、地域・州議会選出議員の75%の議席を獲得して圧勝した。これに加えて軍に25%の議席が割り当てられるので、両院とも軍関係者が圧倒的多数を占めて「安泰」である。NLDは選挙をボイコットして政党登録をせず、非合法化された。
 2011年3月発足の新政権は政治、経済両面で、従来の国際的孤立から脱皮すべく、矢継ぎ早の政策転換に出ている。7月には担当のアウン・チー労働大臣がスーチー女史との対話を始め、8月にはテイン・セイン大統領との面会も実現した。この面会室には、スーチー女史の父、アウンサン将軍の写真が掲げてあった。報道規制が緩和され、インターネット使用やCNNなど外国メディアへのアクセスが改善した。スーチー女史の写真が新聞一面を飾り、街角で販売されている。外国要人とスーチー女史との面会も自由になった。その後の法改正によって、NLDの合法化が認められ、スーチー女史は政党登録を行い、来る4月1日の補欠選挙に他の党員とともに立候補を表明した。以来、国内各地で選挙運動を展開中である。
900人近いとされる政治犯のうち、昨年5月と11月に計約300人を釈放し、本年1月にも多数の政治犯を釈放した。タン・シュエ前国家元首との仲たがいで失脚したキン・ニュン元首相の自宅軟禁も解除された。労働組合を合法化した。9月末にはエヤワディ河上流で中国企業が建設中のダム工事の中断を発表した。生態系の破壊、住民の強制移住などへの不満や批判を受けたもの。中国による他の6件のダム建設計画への影響も必至であろう。
経済面では外資誘致を目的とした1988年投資法の改正が国会で審議中。改正投資法は、外国企業による投資認可の迅速化、土地利用の緩和などが目玉とされる。これに先立ち、昨年9月に外国企業による土地リースの緩和や現地通貨チャットと外貨との市場レートでの交換を導入ずみ。経済改革推進を目指してIMF(国際通貨基金)などの助言を求め、10月にはIMFミッションが派遣され、協議が始まった。
 ミャンマーは2014年のASEAN議長国就任を申し出て、11月のASEAN首脳会議で合意を得た。中国の人権侵害や言論抑圧を黙認する一方、ミャンマーへの制裁を続ける欧米諸国の対応はダブルスタンダードといえる。新政権の民主化、開放政策を奨励すべく、国際社会は制裁を解除して助言や支援の手を差し伸べるべきであろう。
 ミャンマーは非常に親日的な国。1886年に英国の植民地になったが、第2次大戦中に日本軍の訓練を受けたアウンサン将軍などの独立運動を経て1948年に独立した。日本との賠償協定を他国に先駆けて締結した(1954年)。賠償終了後も日本は経済技術協力協定を結んで援助を継続した。だが、長年の政治経済の混迷で魅力が低下、日本の民間投資は停滞した。2010年現在の累積投資額では、中国、タイ、香港、韓国、英国、シンガポールなどの後塵を拝して12番目である。
 新政権の開放政策や中国・近隣国の賃金上昇を背景に、最近頓にミャンマーへの関心が高まっており、昨年9月以降経団連、経済同友会、日本商工会議所、ジェトロなどの調査団も派遣された。政府も昨年6月の菊田外務政務官のミャンマー訪問時に援助の再開方針を表明し、現在、50億円に上る防災、保健、教育など民生分野(BHN)の援助を準備中であるが、ミャンマーの経済発展にとっては道路、橋梁、港湾、工業団地などのインフラ整備が不可欠で、そのためには相当規模の円借款を必要としている。円借款再開のためには、過去の多額の延滞債務問題の解決が先決。玄葉外相は去る2月末の講演で、4月下旬のテイン・セイン大統領訪日を念頭に、延滞債務問題解決に向けた道筋をつけ、本格的な支援の再開に向けた援助方針の見直しを検討していると発表した。ミャンマー側の対日期待は高い。両国の官民双方レベルでの関係強化が望まれる。
(2012年3月記)
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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

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