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地球温暖化問題:京都議定書後の国際的枠組みの在り方


 京都議定書は2012年末に期限切れとなる。その後の空白を避けるには、各国の国内批准手続きを考えて09年末までに新しい枠組みの合意が不可欠とされてきた。この意味で、昨年末の第15回気候変動枠組み条約締約国会議(COP15、コペンハーゲン)での合意成立が鍵であった。しかしながら、首脳レベルの交渉でも決着がつかず、結論は先送りされた。本稿では、この交渉が難航する背景、望まれる新しい法的枠組みなどを分析してみたい。
議論の背景:対立する利害
 規制対象となる温室効果ガス(GHG)の大半は石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料から発生する二酸化炭素(CO2)である。その排出削減は経済成長に不可欠な化石燃料の使用制限であり、各国産業の国際競争力に大きな影響を及ぼし、国民が多大の負担を蒙るだけに、極めて深刻な問題である。正に各国の国益を賭けての交渉であり、複雑に利害が絡み合う。
 92年の国連気候変動枠組み条約は「共通だが差異ある責任」原則の下、産業革命以来化石燃料を大量消費して「地球を汚してきた」先進国の主要責任が明記された。この条約の実施を具体化する97年の京都議定書では、厳しい交渉の末、先進国だけがGHGの削減義務を負い、経済開発と貧困撲滅が優先課題とする途上国は義務を免れた。
更に最大のCO2排出国たる米国はその後議定書の批准を拒否、OECD加盟国たる韓国やメキシコも削減義務の対象外になった。中国、インド、ブラジルなどの新興国は、その後の目覚ましい経済発展によってCO2排出量が急増、06年には途上国の総排出量が先進国の排出量を上回るに到り、今後も大幅増が想定される。07年には、石炭を大量消費する中国が米国を抜いて最大の排出国になった。今や京都議定書の削減義務を負う先進国の排出量は世界全体の28%に過ぎない。

COP15では、GHG削減義務の対象国拡大の是非、削減の目標数値設定とその実施振りの監視方法、先進国から途上国への支援資金規模が焦点であったが、結論を得られなかった。首脳間の交渉失敗を糊塗する形で、議定書埒外の米中印南ア等の作成文書をベースにしたコペンハーゲン合意を承認して何とか出席首脳の顔を立てたが、期待に反して成果の乏しい会議だったといえる。
望まれる枠組み
 気候変動枠組み条約の目的は温暖化による壊滅的被害から地球を守るため、大気中のGHGの濃度を安定化させることにある。このためには、米国及び新興国を含む主要排出国全てが一致協力してCO2削減に取り組む必要がある。国際世論の圧力の下、議定書枠外の国々も、米国が「05年比17%削減」(90年比では3~4%の削減)、中国やインドが「GDP当たりの排出量で05年比40~50%(インドは20~25%)削減」(但し、排出総量では増加)、ブラジル、韓国などそれぞれ自主目標を事前に発表した。
 今後如何なる枠組みで最終決着するか不明だが、米中が入らない京都議定書の延長は無意味である。日欧等一部先進国に過大な負担を課すもので公平の原則に著しく反し、大気中の濃度の安定化にも資さない。全ての主要排出国を含めた法的枠組みの合意が不可欠である。他方、従来の経緯や一人当たり排出量の違いに照らして、当面は先進国と途上国の義務に若干の差異を設けることは止むを得ない。
 一本の議定書の下、米国は日本以上の削減義務を負う必要がある。オバマ政権が米議会の反対で前記目標を超える約束や監視方式に応じないのであれば、限界削減コストがはるかに高い日本は米国以上の法的義務を負うべきでない。日本が提唱したセクター別アプローチも一案である。各国義務履行の監視も、各種国際機関の経験に照らして、日本が条約交渉当初に提唱した「プレッジ・アンド・レビュー(誓約と審査)方式」が望ましい。これはOECDやWTOで実施中の経済、エネルギー、貿易政策等の審査と類似の方式で、全体として目指す目標を設定した上で、必要に応じて交渉で各国が削減目標を設定・誓約し、その実施振りを審査・監視するものである。中国は国連の監視制度導入を拒否したが、WTOの貿易政策審査は受諾している。
先進国から途上国への資金支援では、膨大な金額(10-12年の3年間で3百億ドル、20年までに年1千億ドル)が合意文書に盛り込まれたが、国連機関の経理は非効率で、既存のGEF(地球環境ファシリティ)との重複回避やCDM(クリーン開発メカニズム)の洗練作業を含めて、真に有効かつ効率的な活用方法の検討が肝要。温暖化による海面上昇などで被害が拡大する島嶼国への支援強化は理解できるが、中印のGDP単位当たりの排出量削減目標は、その実施自体が経費節約につながり、資金援助の対象には馴染まない。
鳩山首相は90年比25%削減目標を掲げて喝采を博したが、経済の実態を無視した「ビューティ・コンテスト」に走らず、米中のような粘り強い交渉を期待したい。省エネが進んだ日本の限界削減費用は欧米諸国と比較して格段に大きく、日本企業の国際競争力が著しく損なわれ、海外への雇用、所得、GHGの流出(リーケージ)が起こり、産業空洞化が加速される。地球環境産業技術研究機構(RITE)の試算では、各国の目標達成に当たってのコストは二酸化炭素1トン当たり日本476ドル、EU48~135ドル、米国60ドルで、日本の費用負担が突出して大きくなる。

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