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バイオ燃料:エネルギー安全保障の切り札か

 石油価格は1990年代を通して1バーレル当り20ドル前後の低価格時代が続いたが、今世紀に入って上昇に転じ、昨年半ばに150ドル近い最高値をつけた。多数の漁船が休業に追い込まれた事態は私達の記憶に新しい。その後、グローバル不況の到来で急落したが、新興国を始めとする世界経済の回復で再び上昇に転じている。
石油の高価格時代を背景に、これに代わるバイオ燃料への関心が高まり、ブラジル、米国、欧州、中国を中心に生産が急増している(図を参照)。トウモロコシ、大豆、サトウキビなど食料、飼料と競合する作物が主な原料になるため、近年食料価格の急騰を招くなど、その功罪が問われている。本稿では、バイオ燃料増産に係わる利点と弊害をみてみたい。
バイオ燃料の功罪
 バイオ燃料とは「生物を資源として作られる燃料」で、バイオエタノールやバイオディーゼルなどがある。前者の主原料はサトウキビ、甜菜、トウモロコシ、小麦、大麦、ソルガムなど。後者の原料は、椰子油、菜種、ヒマワリの種、大豆など。獣脂、使用済み料理用油、魚油なども使用される。
 バイオ燃料の最大の利点は、石油輸入の削減によるエネルギー安全保障の確保と温室効果ガスの削減効果とされる。大気汚染の減少、農民の収入と雇用増、ゴミの削減などもある。他方、食料価格の急騰、燃料生産価格の上昇、環境の悪化などの弊害も指摘される。
 以上の諸点をもう少し掘り下げてみたい。第1に、バイオ燃料の原料は再生可能な農産物で、その成長過程で吸収したCO2を大気中に戻すだけで、CO2の追加的排出にならない(カーボン・ニュートラル)から、環境に優しいといわれる。しかし、実体は農産物の生産過程で農機具用燃料、肥料、農薬などに化石燃料が使用され、CO2の純排出はゼロではない。
この確認には各原料の「完全なライフサイクル」におけるCO2排出の測定が必要。OECD(経済協力開発機構)によると、農産物の種類、肥料生産に要したエネルギー投入量、水の使用量、原料輸送用エネルギー、代替地の利用など種々の側面を考慮して測定する必要があって、正確な評価は容易でない。かかる技術的困難を前提にした試算では、ブラジル産サトウキビ使用のエタノールが最も効率的で90%近いCO2削減効果がある。他方、米国のトウモロコシは大量のエネルギー投入を要し、CO2削減は13%にすぎない。甜菜を原料とするEU(欧州連合)のバイオ燃料は40%である。このように、CO2の純排出はゼロではなく、その削減効果は世にいわれるほど大きくない。
第2は、バイオ燃料の価格競争力。IEA(国際エネルギー機関)によれば、ブラジルのエタノールは1リットル当たり20セントと世界で最も低価格で競争力がある。他方、米国の穀物ベースのエタノールはこれより50%余り高く(昨年の穀物価格上昇で更にアップ)、EU産は100%以上高価とされる。このため各国は補助金、税制、関税など各種の優遇措置によって国内産バイオ燃料の増産、保護に当たっている。ガソリンとの一定の混合割合を義務付ける法令も同様である。このような政府補助や規制なしには石油製品との競争は困難といえる。
第3の問題は環境破壊。特に穀物や椰子油を原料とする燃料は原料生産過程での生物多様性の喪失、肥料や農薬の使用による水質悪化、土壌の劣化などが挙げられる。特に熱帯地域の森林、湿地、牧草地の耕作地への転用によって、生物多様性の喪失が加速化される。
第4に、最も深刻なのは食料との競合による食料、飼料価格の高騰で、私達も昨年体験したところ。限られた世界の耕作面積の下、人間の生存に必要な食料を、車を動かす燃料に転用することは賢明であろうか。
第2世代の原料の開発を
 前述の原料は第一世代である。これらの問題を生じない第2世代の原料の研究開発が日欧米を中心に進められている。食料と競合せず、CO2の純排出が少なく、土地の利用面積も小さくてすむ原料の開発である。未だ試験段階で、コストも高い。如何にコストを下げ、大量生産に結び付けるかが課題である。
 投入原料の540%多いエネルギーを発生するスウィッチグラスの研究やボトリオコッカスの研究などが注目される。筑波大と国立環境研究所が取組むボトリオコッカスという微細藻類はCO2を光合成で石油と同じ炭化水素に転換・生産するもので、単位面積当たりの生産量はトウモロコシの800倍以上に達すると試算されている。石油代替燃料として注目されるカナダや米国のオイルシェールはこのボトリオコッカスが基になっているといわれる。
 このような第二世代の原料の大量生産には数十年かかるともいわれるが、早期実現が切望される。その暁には、石油の99%を輸入する日本も、燃料輸出国になりうる。日本の技術でこの夢を実現してほしい。温室効果ガスの25%削減も夢ではなくなる。
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テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

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