FC2ブログ

創設90周年を迎えたILO(国際労働機関)

 世界的な不況の中、失業問題が深刻化している。失業自体は経済回復に伴って早晩改善が期待されるが、実は「雇用の量」とともに国際的に重視されているのは「雇用の質」である。最近よく聞かれる「ワーキングプア」は「雇用の質」を象徴する言葉である。
 近年世界的な「雇用の質」の改善・促進に取組んでいるのがILOである。ILOは第一次世界大戦後のベルサイユ条約によって1919年に創設され、本年はその90周年に当たる。現存の国際機関の中では最古参で、日本は当初からのメンバーで、1940年に脱退したが、51年に復帰した。国連など他の国際機関が各国をメンバーとするのに対して、ILOは各国の政府、使用者及び労働者からなる3者構成になっている。日本は創設当初から常任理事国としてその活動に貢献してきている。
ILOの目的と活動
 ILOの目的は労働条件の改善、完全雇用、労使協調、社会保障などの推進を通じて「社会正義」を実現し、もって恒久平和の確立に寄与することにある。
 このために、数多くの国際労働基準の設定と監視を行い、これまでに188本の条約と199本の勧告を採択している。例えば、一日8時間労働を定めた第1号条約(日本は未批准)に始まり、結社の自由と団結権、強制労働や児童労働の禁止・撤廃、雇用と職場における差別の撤廃、労働安全衛生、労使協議、雇用・社会政策など幅広い分野に及んでいる。(条約は加盟国の批准によって当該国に拘束力が生ずる。日本は47本の条約を批准。)
また、労働・生活条件の向上、雇用機会の増進、基本的人権の確保を目指して、国際的な政策や計画の策定に当たっている。ここ十年余りは、労働基準設定から途上国への技術協力を通じた諸原則の実施促進・実現の方に活動の重点を移してきている。
ディーセント・ワークの推進
 1999年に就任したファン・ソマビア現事務局長は、ILOの活動目的としてディーセント・ワークの概念を提唱し、その促進に努めている。その具体的内容は、①生産的で公正な所得をもたらす仕事の機会(雇用の創出)、②仕事における基本的原則と権利の推進・実現、③職場における保障と家族に対する社会的保護、④自分たちの生活に影響を及ぼす決定への参加(社会対話の強化)、⑤全ての待遇と機会における男女平等である。
この目標は今やG8サミットでも認知されるなど、社会労働問題に取組む際の世界的な主流になった。日本では「働きがいのある人間らしい仕事」と訳されている。失業、不完全就業、質の低い非生産的な仕事、危険な仕事、不安定な所得、男女不平等などは、ディーセント・ワークの欠如とされる。
 近年、地球温暖化など地球環境問題が深刻化し、持続可能な低炭素経済への移行が強まる中、環境にやさしい雇用(グリーン・ジョブ)の創出機会を増やすための取組みも重視されている。
アジアの課題
 アジアはその目覚ましい経済発展により、世界経済の成長センターとされ、「21世紀はアジアの世紀」とも言われる。しかし、これはあくまでも総体としてのことで、実情をみると種々の問題を抱えている。
グローバル化の下、国家間、そして国内での格差が拡大している。経済成長の割には雇用が増加せず(雇用弾性値が小さい)、特に若年失業が深刻である。収入が1日2ドル以下の「ワーキングプア」が世界の3分の2を占め、南アジアでは労働者の84%、東南アジアで58%、東アジアで47%(2005年)がこれに該当する。男女不平等が大きく、不完全就業率も高い。政府や企業で働く賃金労働者は限られ、インフォーマル経済部門に従事する者の比重が非常に高い(インドの94%を始め、80%以上の国々も)。
アジア諸国の団結権・団体交渉権など重要な条約の批准状況が遅く、社会保障制度に至っては日本、韓国など一部の国を除いて非常に遅れている。特に、失業保険は10年前のアジア通貨危機を経験したタイなどでは導入されつつあるが、未だ初期段階にある。医療保険や年金制度も未整備の国が多い。特に、従業者が圧倒的に多いインフォーマル経済部門では社会保障制度が皆無に等しく、この部門への拡充を急ぐ必要がある。
 このような実態の改善を目指してILOでは、「アジアのディーセント・ワーク十年」の下、加盟国や民間団体などからの拠出金により、ディーセント・ワーク実現のための各種技術協力を実施している。アジアの最先進国としての日本は、社会保障制度面での豊富な経験をベースに、ILOとの協力の下、その企画・立案、法制度、行政手続き、電算化など種々の技術協力を提供し得る立場にある。労働災害の防止と職場の安全衛生の確保、職業安定行政など、日本の経験を移転する余地は多々ある。
 日本企業のアジア地域への進出は盛んであり(例えば、タイでは外国投資の40%が日本)、これら企業としては現地の労働・社会保障関連の法令順守は勿論のこと、企業の社会的責任の一環として、これを上回る手当などの配慮が望まれる。現にそうしている日本企業が多いと承知している。
スポンサーサイト



プロフィール

minkewhale

Author:minkewhale
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード